「統合失調症を持つ人への援助論」 向谷地生良 著 を読みました。
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浦河でのSSTに当事者研究、認知行動療法、著者の経験談、当時者との対談、ソーシャルワーカーの考え方などについておおまかに書かれた本でした。
本の最初は当事者が主体となった浦河での活動の話題から始まり、後ろへ読み進んでいくに従って、ソーシャルワーカーとはどんな心構えが必要か、今まで著者がどのような方向を向いて援助を行って来たかが語られていきます。
私の最近気にしている当事者スタッフについても少し書かれていました。何か盗めるものはあるかなと思って読んでいたのですが、べてるでの当事者スタッフと他の各地域での当事者スタッフはそれぞれその場所ごとに特性が違うのだろうなと思いました。病院とべてると各種施設の連携。その背景をもって成り立っていく仕組みがあるのだと思います。地域を巻き込んで作り上げた浦河独自の生活の中で当事者スタッフの威力が最大限発揮できているのだと思います。
当事者が医療や福祉に切り込んでいく時、それぞれの職場の特性を見極めないと、人と人との関係性で成り立つ仕事ですからいろいろ難しいことがあるのだろうなと思います。著者は広大な地域のたった一人のソーシャルワーカーとしていろんなものを作り上げてきています。でも、主役は当事者だということについてブレがありません。そんな著者の考え方の下に集まった当事者スタッフ&健常者スタッフの活躍が全国的に注目されるようになるまでになった原動力になったのだと思います。ただやみくもに当事者がスタッフをやればいいというわけではないのでしょうね。
この本からではまだまだ表面的なことしかわかりません。この奥に隠された核があるはずです。書かれていない部分をなんとか読み取ってみたいところです。相談時のテクニックから哲学的バックボーンまで端々にヒントは出てきています。これを参考に自力で何かをひっぱり出すことが必要で、ただ真似するだけではいけないのだろうと思います。自分の背骨を作り出す一つの材料としてこの本を読み返そうと思います。
おわりのほうに「ソーシャルワーカーのための五つの『すすめ』、七つの『わきまえ』」という章があり、いろいろ含蓄に富んだ文章が載っているのですが、そのうちの一つに【「知ったかぶり」のすすめ】というのが登場します。広く浅く知識を収集しておくことの大事さを説いているのですが、おもしろいことに、私の大学の先生(青木聖久先生)は「知ったかぶりをしないこと」を重要なことだと説かれます。両者の表面上のいいまわしは異なりますが、知識や情報の引き出しの多さが重要になってくるということで一致するのだろうなと思います。知識のきっかけをつかんだらそこから切り込んでいく。そして知識の正確性を上げていく。調査なり、専門家の援助を仰いだり・・・。チームプレイの考え方を違った切り口からとらえているのだと思います。
いろいろ注目を集める「べてる」ですが、部分的にでもそれを越えた何かが出来る様になれたらいいなとうすぼんやりとしたアタマで思いました。
久々に教科書から離れてのびのび読書が出来ました。
・・・・日曜日の試験はだいじょうぶなのでしょうか。
まあ、なんとかなるさ。