「やっと本当の自分に出会えた」上森得男 を読みました。
統合失調症を患った家族と本人の書いた本です。
家族に統合失調症を抱えるというのはとても大変なことだと思います。
私自身振り返っても、だいぶ家族には苦労をかけました。
この本のカギは新薬「リスパダール」。
私も飲んでいたことがあります。頓服用の液剤は残念ながら使用したことはありませんが。
新しい薬で目の前が開けるように回復していった様子が書かれています。
私も時期的に、旧向精神薬から非定型向精神薬への過渡期に
統合失調症の治療を受けました。
私の感想としては、「薬剤が決め手の全てではない」です。
私も新薬に切り替えましたが、体感できるほどの違いは感じませんでした。
ただし、発症後、はじめて薬を飲んだ時にはそれが強烈に効いたのを覚えています。
旧薬だったのでしょうが。初診の後で赤い錠剤を渡されて飲んだのですが、
それから2日間眠り続けました。(なんだったんだろう?)
薬は確かに効くのです。
効き方は個人によって大きく差があります。
現在私は、ジプレキサを1日10mgの処方になっています。あとは睡眠導入剤と副作用止め。
再発予防のための維持量ということだと思いますが、
未だに被害妄想的な部分は残っており、性格もあいまって病気で障碍なのだと思います。
アドヒアランスにも触れられていますが、薬の作用機序は完全には分かっていないはずで、
(神経伝達物質の量を調整するとなぜ症状が変化するのか?どのように関係するのか・・・?)
そこで完璧なアドヒアランスを求めるのは苦しいんじゃないかと思うのですが、
「多くの人が効いたという統計がある」ということで納得していいものかどうか。
薬を飲むことは大事だけれども、その根拠はまだ盤石ではないということも
頭の隅に置いておきたいところです。
「回復する病気である」という希望を与えるための本なのでそんなことを言うのは野暮なのですが。
書かれたのが自立支援法施行前ということで、福祉施策にはあまり紙数が割かれていません。
一旦この病気にかかると長期のサポートが必要であることが多く、
それには福祉面からの視点が必要なのですが、とりあえず様子見という書かれぶりでした。
急性期の患者さんを抱える家族に渡すにはいい本かもしれないとは思いました。