うつ病で自殺が増加しているなど問題となっていますが、
先日、NHKスペシャルで特集が組まれました。
再放送があります。内容をまずまとめてみました。
NHKスペシャル
「うつ病治療 常識が変わる」
2009/03/04 24:45 ~ 2009/03/05 2:00 (NHK総合)
うつ病患者は100万人を超えたといわれます。
心の風邪と言われ、薬物療法で治ると言われる様になりました。しかしその半数は再発するそうです。
今、うつ病治療の常識が変わってきています。
ある例ではうつ病に長期間悩んできた方が薬の処方を変えることで劇的によくなりました。
変更前の過剰な薬物投与が症状を悪化させていたのです。作用、副作用で家の中で転倒事故を起こすまでになっていました。
うつ病はセロトニンという脳内物質の働きが弱まることでおきると考えられています。抗うつ薬のSSRIはセロトニンの量を増やすことで効果がでます。しかし、セロトニンが増加すると意欲ややる気をだすドーパミンが減ってしまいます。このためにうつ病が悪化したと勘違いされてそれにより抗うつ薬が増やされるという悪循環が起こります。
抗うつ薬が増えるにつれ副作用を抑える薬も増やされます。多くの処方をされ、倒れるまでになった方が、処方されていた薬を少しづつ減らし、少量の新しい薬へ置き換えることで症状が改善された例が紹介されました。薬を減らすときには、症状の再燃もあるため、時には入院するなど注意深く減薬する必要があります。上手に調整することで社会復帰することが可能になります。
主治医とのコミュニケーションを上手く取りながら、薬物の調整をすることが大事です。
不適切な処方が多くなされる中、医師たちも研修を積み、より良い医療を模索しています。
また、薬だけが治療法ではないことも留意点です。
医者選びの注意点
薬の処方や副作用について説明しない。
いきなり3種類以上の抗うつ薬を出す。
薬がどんどん増える。
薬について質問すると不機嫌になる。
薬以外の対応法を知らないようだ。
診断法も変わりつつあります。
うつ病の中でも診断が難しいケースがあることが分かってきています。
ある方の例では、抗うつ薬で一時的に良くなるのですが、またより深いうつに落ち込んでしまいます。医者を転々としても相手にしてもらえません、そしてある病院にたどり着きます。ここはチーム医療が行われています。そこで患者ミーティングでその方が活動的になるのにスタッフが気づきました。医師の診察では分からなかった様子から、彼は「双極性障害Ⅱ型」と診断されました。この例では、薬物を合ったものに変える事で症状は改善されました。
「双極性障害Ⅱ型」は普通のうつ病と同じように治療するといったん良くなっても、さらに深いうつに陥ってしまいます。他にも気分変調症、非定型うつ病などいろんなタイプのうつ病があることが知られるようになっています。
うつ病の診断ならびに治療方針には医師によってかなりの違いがあるようです。
同じ人が違うクリニックを複数訪ねたところ、まるで違った処方がなされるほどです。
それを専門家が見たところ、それぞれの医師で診断が分かれているとみられる上に、不適切な処方が見つかりました。
この不適切な治療は患者の増加に伴う、新規のクリニックの乱立が原因のひとつのようです。しかも非専門家の医師の開業があるようです。なんらかの基準の制定が望まれます。苦情は保健所が受け付けているのですが、医師に処方権があるために指導にも限界があります。厚生労働省では医師に対して処方のガイドラインを用意したり、精神科以外の医師に対して研修を行い、専門家に患者をつないでいこうとしています。また、日本精神神経学会では一定の技量を持った専門医制度を作ろうとしています。
難しいうつ病の診断ですが、客観的な診断法が開発されつつあります。
群馬大学では新しい機器を使って診断に取り組んでいます。光を使って脳の血流量を調べながら、データを画像化しうつ病か否かが一目でわかるようになります。また、うつ病と双極性障害の区別もつけられます。客観的な診断法として期待されています
また、最先端の機器を使った治療が行われ始めています。
電気を流したコイルによる磁気刺激によって脳を活発に動かせるようにできる、磁気刺激療法が一例です。
最新機器だけが有効な治療法ではありません。
イギリスでは心理療法による治療が推進されています。カウンセリングによる症状改善を行う認知行動療法です。患者が本当の自分の感情に気づくように、認知の偏りを修正するように心理士が促します。心理士と患者は二人三脚で症状の改善に向かいます。イギリスでは、国を挙げて認知行動療法を推進するために心理士の養成が始められています。これにより抗うつ薬の使用量を減らすことで医療費の削減にもつながると考えられています。
一方、日本では心理療法は医師には行う時間的余裕が無く、臨床心理士が行うことが多いのですが、保険が利かないために患者負担が高額になってしまい、大きなハードルとなっています。これからはいろんな職種が治療に関わることが望まれています。また、患者の家族を治療に巻き込んで治療に生かすことも大事なことです。
今、社会全体でうつ病の治療・回復に取り組むことが望まれています。
以上が放送の内容です。
私は統合失調症ですのでうつ病とは違っているのでしょうが、陰性症状によるうつ状態を経験しており、そこからその苦しみを想像します。しかし、難治性のうつ病の方を見ると、うつとのつきあい方というものがあるようで、その自己コントロールの様子を垣間見ると、私などでは想像できない困難さがあるようでした。
励ましてはいけないゆえに話すのにも深いところに入ってしまうのに躊躇してしまいます。この放送では心理士が認知行動療法を行っていましたが、私の会った方は自分自身で自分の認知のひずみを見つけて治そうとしていらっしゃいました。その方はかなり深い洞察を行っているように見受けられ、私は声をかけるのもためらわれるほどでした。
これから私がPSWとして活動するならば、どのようなスタンスを取るのがよいのか良く考えなければいけません。専門分野は福祉であり、生活に重点を置くことになります。しかし、現場では多様な状況下でとっさにクライエントの心理をつかむ必要があります。
統合失調症の認知機能の障害が致命的なことにならなければいいのだが・・・と不安は増すばかりです。私はいわゆるKYです。しかも筋金入りのKYなのです。人を無意識に傷つけることを気づかない。場に合った行動がとれない・・・。
人のことよりまず自分。自己覚知をもっと深くしなければなりません。
(でも他人を鏡にしないと自分は見えてこないわけで・・・)
「うつ病は薬で治る」と「言う」ことで多くの人を傷つけないようにしなければいけません。逆も然り。うつ病は「気の持ちよう(=認知の歪み)」だけでもないのです。認知行動療法だけでも薬物療法だけでもなく、その人の生活全般を見る視点がPSWには求められてくるのだと思います。結局、非常に広範な知識と能力が求められるわけでもあり、身のすくむ思いです。
なんだか大変なことになってきちゃったなあと思います。
でも、大変なのはお互い様。種別は違えど精神障害当事者同士という強みをどこかで使えないかと、自分の障害を研ぎ澄ませておこうと思います。・・・って何を言ってるのかわからなくなってきました。
「うつ病治療 常識が変わる」・・・その前に常識ってどうだったのか?いろんな言説が無理矢理「うつ病はこころの風邪です」とまとめられていたのが常識だったのでしょうか?そして、変わってこれからどうなるのか。タイトルに少し疑問を持ったりします。病気を持った「個人」に常識をあてがうのは危険です。ひとそれぞれ、状況によっても違う。それゆえ放送にあったでたらめ診療がまかりとおるのですが・・・。標準化と個別化・・・。難しいところです。
勉強しなくちゃ・・・。